よみがえる日本の伝統着

日本全国で着物離れが進んでいます。着物を持っていても着ない、必要なくなったので処分したい、という声をよく聞きます。大島紬も状況は同じですが、高価な上に代々受け継いだ思い入れのある品を処分することに躊躇し、小物にリメイクしたり洋服に仕立て直したりする方も少なくありません。

しかし、古い着物のリメイクや仕立て直しには、耐久性の問題があります。もともと擦れに弱い生地で洋服には向きませんし、劣化して破れやすくなっているためすぐにダメになってしまうことも多々あるようです。

私たちの願いは、大切に受け継がれながらも活躍の場を失ってしまった大島紬などの着物を、新しい時代の中でずっと愛し続けていただくことです。すぐに使えなくなるようなものに再生しても意味はありません。そこで考えついたのが、裂き織りという技法でした。

裂き織りとは、古い生地を裂いたものをヨコ糸として新しい生地を織っていく手法です。貴重な木綿をリサイクルするために生まれたと言われています。大島紬の機を使い、大島紬のタテ糸で裂き織りを織り上げれば、耐久性の問題も解決するだけでなく、着物離れとともに仕事が減った奄美の職人に仕事を与えることもできます。古い着物をよみがえらせるためには、この方法がいちばん良いのではないだろうか・・・

試作してみると、ざっくりとした風合いでありながら、柔らかな手ざわりのまったく新しいファブリックが織り上がりました。職人たちは普段から大島紬を扱っているため、細かい作業も難なくこなすことができ、伝統の道具も役立ちました。その後も試行錯誤を繰り返しながら製法に工夫を重ね、より洗練された上質な素材へと仕上げることが可能になりました。

従来の裂き織り生地とも違うこの生地を「奄美布」と命名し、奄美の伝統の大島紬を支えることが出来る織物として育てていきたいと思います。

「奄美布」ができるまで

「奄美布」として大島紬を再生させるためには、高度な知識と技術が必要です。何十年も技を磨いてきた奄美のベテランの職人たちが、工程ごとに丁寧に手をかけ、時間をかけて仕上げていきます。

もとになるのは、お客さまからお預かりした大島紬等の古いお着物。思い出深い、貴重な品をほどいてやさしく洗い、アイロンがけを行った後に細く裂いていきます。裂いた生地をヨコ糸として織り機で織っていきます。

大人の着物一枚をもとに出来上がる「奄美布」の生地は、着尺幅(約39cm)で2〜3mほど。材料となる着物生地によって異なります。強く打ち込まれた生地は、厚みのあるざっくりとした風合いの中に、絹のしなやかさやツヤがあり、大人のファッションやインテリアの素材にぴったりです。仕上がった生地をそのままお客さまにお返しすることもできますし、オーダーメイドのコートやストール、帽子、財布などの小物にお仕立てして、お送りすることも可能です。ものを大切に愛おしむ心と、世界にひとつだけのものを手にする満足感が融合し、お客さまからご好評いただいています。