人と技


 
大島紬特有の精緻で美しい絣模様は、織り上がった生地に後から模様を染め付けて出来上がるものではありません。模様に合わせて糸を染め、その糸を使って織り上げていく「織絣(おりがすり)」です。明治時代が終わりに近づく頃から昭和の中頃まで、原料となる糸や織機、精緻な柄を作り出す技術などさまざまな発明と工夫が繰り返され、現在の細かく複雑な工程が完成しました。

仕上がりまで通常なら1年近くかかる工程は、ほとんどすべてが職人の手作業によるものです。まず織り上がりのデザインをもとに図案を作り、必要な絹糸の長さや本数をそろえることから始まります。そろえた絹糸は、海藻を煮溶かして作った「イギス」という独特の糊をつけて棹に張り、天日で乾燥させた上で大島紬独特の「締加工」へと移ります。

締加工は、絣模様に合わせて色を染めずに白く残す部分を防染するために、絹糸を木綿の糸で織り締めて「絣筵(かすりむしろ)」を作る工程です。出来上がった絣筵はテーチ木と泥田で染められた後、一本ずつばらばらに解かれて図案の通りに並べられ、いよいよ織りの工程に入ります。経糸と緯糸の絣を正確に合わせるため、職人は7センチごとに織りを止めて経糸をゆるめ、緯糸を調整しなければなりません。反物がひとつ織り上がるまで長い月日がかかり、絣模様が細かくなるほど、職人には熟練の技が求められます。

大島紬は、奄美の人と自然が作り上げるアート。生産量は最盛期の数分の一にまで減ってしまいましたが、世界に類を見ない貴重な文化としての誇りを胸に、その技と心を後世まで伝えていこうと決意しています。